「なんとなく回っている収集ルート」に潜むコスト
毎日の収集業務が、長年のベテラン運転手の経験と勘に支えられている——。廃棄物処理業を営む多くの現場で見られる光景です。しかし、燃料費の高止まりや人手不足が深刻化するなか、「なんとなく回っているルート」に潜むムダが、じわじわと経営を圧迫しはじめています。
本記事では、いま注目される「収集ルート最適化」について、その背景から具体的な効果、導入時の注意点、そして中小企業が無理なく始めるための手順までを、できるだけ平易に解説します。
なぜ今、収集ルート最適化が注目されるのか
背景にあるのは、業界を取り巻く構造的な変化です。
ドライバー不足と「2024年問題」
2024年4月から、働き方改革関連法により自動車運転業務の時間外労働に上限規制が適用されました(厚生労働省)。いわゆる「物流の2024年問題」ですが、これは一般貨物だけでなく、廃棄物を運ぶ収集運搬車両にも関わる課題です。限られた労働時間で従来と同じ量を回収するには、走行そのものの効率を上げるほかありません。
人材の高齢化と属人化
環境省「日本の廃棄物処理」でも継続的に指摘されているとおり、廃棄物処理を担う人材の確保は業界共通の課題です。ルートがベテランの頭の中にしかない状態では、退職や急な欠勤が業務全体を止めかねません。ルートを「見える化」し、誰でも回れる状態にすることが、事業継続の観点からも求められています。
収集ルート最適化で得られる効果
収集ルート最適化とは、収集先の位置・収集量・道路状況・車両の積載量などをもとに、走行距離や時間が最も効率的になる巡回順序を組み立てる取り組みです。近年はデジタル地図やGPS、簡易なクラウドサービスを使って実現できるようになりました。
期待できる主な効果は次のとおりです。
- 走行距離・燃料費の削減:ムダな重複走行や遠回りを減らせます。
- 残業時間の圧縮:同じ収集量をより短い時間で回れます。
- 属人化の解消:ルートがデータ化され、新人でも安定して運行できます。
- CO2排出の抑制:走行距離の削減は環境負荷の低減にもつながります。
なお、削減効果は収集エリアの密度や現状の運行状況によって大きく異なります。「他社で○割削減できた」という数字を鵜呑みにせず、自社での試算を前提に検討することが大切です。
導入時の注意点・よくある失敗
ツールを入れれば自動でうまくいく、というわけではありません。つまずきやすいポイントを押さえておきましょう。
現場データが揃っていない
最適化の精度は、収集先の住所・収集量・時間指定といった元データの正確さに左右されます。まずは現状のルートと収集条件を棚卸しすることが第一歩です。
現場の合意を得ないまま進める
システムが示すルートが、長年の運転手の感覚と食い違うことは珍しくありません。狭い道や地域住民との関係など、データに表れない現場知もあります。頭ごなしに押し付けず、現場と一緒に検証する姿勢が定着のカギです。
いきなり全社展開する
最初から全車両・全エリアで切り替えると、混乱が大きくなりがちです。まずは一部の車両やエリアで試すのが安全です。
中小企業が始めるためのステップ
ITに詳しくなくても、順を追えば着実に進められます。
- 現状把握:既存ルート・収集量・所要時間を書き出す。
- 課題の特定:重複走行や残業が多い区間を洗い出す。
- 小さく試す:1台・1エリアでルート最適化ツールを試用する。
- 効果検証:走行距離や時間の変化を数値で比較する。
- 横展開:効果を確認しながら対象を広げる。
まとめ
収集ルート最適化は、燃料費の削減、人手不足への対応、そして属人化の解消を同時に狙える、廃棄物処理業にとって現実的な一手です。大がかりな投資でなくても、現状の棚卸しと小さな試行から始められます。
TechXは、廃棄物処理業をはじめとするレガシー業界に特化し、現場に寄り添ったDX支援を行っています。「自社の場合、何から始めればよいか」を具体的に知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

