「DXを進めたいが、誰がやるのか分からない」という課題
「DXが大事なのは分かった。でも、社内に詳しい人がいない」——。これは廃棄物処理業・不動産業・建設業など、いわゆるレガシー業界の経営者・管理職の方から最も多く寄せられる声のひとつです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITやデジタル技術を使って業務のやり方やビジネスモデルそのものを変革することを指します。しかし、どんなに優れたシステムを導入しても、それを使いこなし、現場に定着させる「人」がいなければ成果は出ません。
この記事では、DX人材育成の基本について、ITに詳しくない方にも分かりやすく解説します。
なぜ今「DX人材育成の基本」が注目されるのか
深刻化するデジタル人材不足
経済産業省が公表した「デジタルスキル標準」(2022年12月策定)では、DXを推進するために必要な人材像とスキルが体系的に整理されました。同省の試算によれば、2030年には最大約79万人のIT人材が不足するとされています(経済産業省「IT人材需給に関する調査」2019年)。
この不足は大企業だけの問題ではありません。むしろ中小企業こそ、限られた人員でDXを進める必要があるため、既存社員のスキルアップが急務です。
外注だけでは限界がある
「ITのことはベンダーに任せればいい」という考え方もありますが、自社の業務を最も理解しているのは現場の社員です。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の「DX白書2023」でも、DX推進に成功している企業の多くが社内人材の育成に取り組んでいることが示されています。
外部に丸投げするのではなく、社内に「ITと業務の橋渡しができる人材」を育てることがDX成功の鍵になります。
DX人材育成の具体的な活用事例・効果
事例1:建設業での現場リーダー育成
ある中堅建設会社では、現場監督クラスの社員にタブレット操作と施工管理アプリの研修を実施しました。3か月間・週1回のオンライン研修を経て、日報作成の時間が1人あたり1日30分短縮されたといいます。特別なIT経験がなくても、段階的に学べば実務に活かせることを示す事例です。
事例2:廃棄物処理業での事務スタッフDX化
配車管理をExcelで行っていた会社が、事務スタッフ2名にノーコードツール(プログラミング不要でアプリが作れるサービス)の研修を受けさせました。約2か月で簡易的な配車管理アプリを自社で構築し、電話連絡の回数が大幅に減少した例もあります。
国の支援制度も充実
厚生労働省の「人材開発支援助成金」では、従業員のデジタルスキル研修にかかる費用の一部が助成されます。また、経済産業省が推進する「マナビDX(デラックス)」では、無料または低価格で受講できるデジタルスキル講座がポータルサイトにまとめられています。中小企業でも活用しやすい制度が整いつつあります。
導入時の注意点・よくある失敗
失敗1:目的が曖昧なまま研修を始める
「とりあえずITの勉強をさせよう」では、何を学ぶべきか分からず挫折しがちです。まずは「どの業務をどう改善したいのか」を明確にし、そこに必要なスキルを逆算して学ぶことが重要です。
失敗2:一部の社員だけに任せてしまう
「若い社員ならできるだろう」と特定の人にだけ負担を集中させると、その社員が異動・退職した途端に取り組みが止まります。経営層・管理職も基礎的なリテラシーを身につけることで、組織として継続できる体制になります。
失敗3:いきなり高度な内容を学ばせる
プログラミングやAIといった高度な内容から始めると、ほとんどの社員がついていけません。まずはクラウドサービス(インターネット経由で使えるソフトウェア)の操作や、データの整理方法など基礎から段階的に進めましょう。
中小企業が始めるための5つのステップ
ステップ1:自社の課題を洗い出す
「紙の書類が多い」「情報共有が口頭だけ」など、日常業務の困りごとをリストアップします。これがDX人材育成のゴール設定になります。
ステップ2:推進役を決める
ITに詳しい必要はありません。「業務改善に前向きな人」「周囲を巻き込める人」を1〜2名選びましょう。
ステップ3:無料・低コストの学習機会を活用する
前述の「マナビDX」や、各ITベンダーが提供する無料eラーニングを活用すれば、初期費用を抑えて始められます。
ステップ4:小さな成功体験を作る
たとえば「勤怠管理をクラウド化する」など、1つの業務改善に集中して取り組み、成果を社内に共有します。この小さな成功が社内全体のモチベーションを高めます。
ステップ5:外部パートナーと連携する
自社だけで進めることに限界を感じたら、DX支援の専門会社に伴走を依頼するのも有効です。研修設計から実務への落とし込みまで、一貫してサポートを受けることで定着率が上がります。
まとめ
DX人材育成の基本は、「高度なIT人材を採用すること」ではありません。今いる社員が、自社の業務課題を理解したうえでデジタルツールを使いこなせるようになること——これが中小企業にとっての現実的なDX人材育成です。
大切なのは、小さく始めて着実に積み上げること。まずは自社の課題整理から始めてみてはいかがでしょうか。
「何から始めればいいか分からない」「自社に合った育成プランを相談したい」という方は、お気軽にお問い合わせください。レガシー業界に特化したDX支援の経験をもとに、貴社に合った進め方をご提案いたします。

