深刻化する人手不足——建設業が新技術に目を向けるべき理由
国土交通省「建設業活動実態調査」によれば、建設業の就業者数はピーク時(1997年)の約685万人から大きく減少し、高齢化も進行しています。工期の長期化やコスト上昇が経営を圧迫するなか、生産性向上の切り札として注目を集めているのが「3Dプリンティング(建設用3Dプリンター)」です。
本記事では、建設業における3Dプリンティングの最新動向と、中小企業が導入を検討する際のポイントを解説します。
なぜ今、建設業で3Dプリンティングが注目されるのか
人手不足と工期短縮の両立
建設用3Dプリンターは、セメント系の材料をノズルから押し出しながら積層し、壁や構造物を自動で造形する技術です。型枠の設置・解体といった従来の工程を省略でき、少ない人員で短期間に施工できる可能性があります。
国の後押しと技術基準の整備
国土交通省は「i-Construction」の推進を通じて、建設現場のICT活用を促進しています。3Dプリンティングもその延長線上にある技術であり、今後の技術基準整備が進むことで、導入のハードルは下がっていくと考えられます。
具体的な活用事例と効果
国内事例:住宅の短期間施工
兵庫県に本社を置くセレンディクス社は、建設用3Dプリンターを活用した住宅「serendix50」を開発しました。同社の公式発表によれば、施工時間は約23時間20分、販売価格は550万円からとされています。従来の住宅建設に比べて工期とコストの大幅な圧縮が期待できるモデルです。
国内事例:大手ゼネコンの研究開発
大林組は独自のコンクリート3Dプリンティング技術を開発し、実証実験を重ねています。同社のプレスリリースによると、複雑な曲面形状の構造物を型枠なしで造形できることが確認されており、意匠性の高い建築物への応用も視野に入っています。
海外事例:大規模コミュニティの建設
米国のICON社は、テキサス州で3Dプリンターを活用した住宅コミュニティの建設を進めています。同社の公式サイトによれば、壁体の出力を自動化することで、従来工法に比べて廃棄物の削減と施工の効率化を実現しているとのことです。
導入時の注意点・よくある失敗
1. 法規制と技術基準の確認不足
日本では建築基準法上、3Dプリンティング工法が標準的な仕様規定に含まれていない部分があります。構造物に適用する際は、個別の大臣認定や実験データの取得が必要になる場合があります。導入前に行政への確認を怠ると、計画の遅延につながります。
2. 「すべてを3Dプリンターで」という誤解
現時点の技術では、建物のすべてを3Dプリンターだけで完成させることは困難です。配筋・配管・仕上げなどは従来工法との組み合わせが前提です。「何を3Dプリンターに任せるか」を明確にすることが成功の鍵です。
3. 初期投資の過大見積もり
自社で大型プリンターを購入する必要はありません。外部の専門企業との協業や、部材の外注から始める方法もあります。最初から大きな設備投資を計画すると、費用対効果が見えにくくなります。
中小企業が始めるための3つのステップ
ステップ1:情報収集と社内共有
まずは国土交通省や建設業振興基金が発信するICT関連の資料を確認しましょう。展示会(Japan Build等)への参加も有効です。経営層だけでなく、現場担当者も含めた社内共有が重要です。
ステップ2:小規模な実証から始める
いきなり住宅全体を手がけるのではなく、外構の装飾部材やベンチなど小規模な構造物で試すのが現実的です。3Dプリンティングの専門企業と連携し、コストと品質を検証しましょう。
ステップ3:補助金・助成制度を活用する
中小企業庁の「ものづくり補助金」など、新技術導入に使える公的支援制度があります。自社だけで費用を負担せず、制度を活用して初期リスクを抑えることが重要です。
まとめ
建設業における3Dプリンティングは、人手不足や工期短縮といった業界の根本課題に対する有力な選択肢です。まだ発展途上の技術ではありますが、国内外で着実に実用化が進んでいます。
大切なのは、「いつか導入する」ではなく、今のうちに情報を集め、小さく試してみることです。技術の進歩は速く、早期に動いた企業ほど競争優位を築けます。
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