「最後の1区間」がコストを押し上げていませんか
物流の現場で、いま最も課題が集中しているのが「ラストワンマイル」です。ラストワンマイルとは、配送センターや営業所から最終的な届け先(消費者の玄関先など)までの、いわば「最後の1区間」を指します。距離は短くても、届け先が細かく分散し、不在による再配達も発生するため、実は配送コスト全体の大きな部分を占める区間として知られています。
ドライバー不足や燃料費の高騰が続くなか、この区間をいかに効率化するかが、物流業の経営を左右するテーマになりつつあります。本記事では、ITに詳しくない経営者・管理職の方に向けて、ラストワンマイルの最新動向と、無理のない導入の進め方をご紹介します。
なぜ今、ラストワンマイルが注目されるのか
荷物量の増加とEC市場の拡大
ネット通販の普及により、家庭に届く小口の荷物は年々増えています。経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」によれば、2023年の消費者向け(BtoC)電子商取引のうち物販系分野の市場規模は約14.6兆円に達しました。国土交通省の調査では、令和4年度の宅配便取扱個数は約50億個にのぼっています。荷物が増えるほど、届け先が分散するラストワンマイルの負担も大きくなります。
ドライバー不足と「2024年問題」
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に上限規制が適用されました(いわゆる「2024年問題」)。輸送力の不足は深刻で、政府の物流政策で引用されたNX総合研究所の試算では、対策を講じない場合、2030年度には全国で約34%の輸送能力が不足するおそれがあるとされています。限られた人手で荷物を届けきるために、ラストワンマイルの効率化が急務となっているのです。
具体的な活用と期待できる効果
ラストワンマイルの改善では、主に次のようなIT活用が進んでいます。
- 配車・ルート最適化システム:AIが交通状況や荷物量をもとに最も効率的な配送順路を自動で算出します。走行距離の短縮により、燃料費と労働時間の削減が期待できます。
- 再配達を減らす仕組み:配達前の通知、置き配、宅配ボックス、コンビニ受取などの導入です。国土交通省は再配達の削減を重要課題と位置づけており、一度で届く割合を高めることが、そのままコスト削減につながります。
- 配送状況の見える化:ドライバーの位置や配達完了をリアルタイムで把握し、問い合わせ対応や再配達の手配を効率化します。
いずれも「走る距離を減らす」「一度で届ける」という、コストに直結する効果を狙うものです。
導入時の注意点・よくある失敗
期待を持って導入しても、つまずくケースは少なくありません。よくある失敗は次の3つです。
第一に、現場の運用に合わない高機能なシステムを選んでしまうこと。多機能でも使いこなせなければ意味がありません。第二に、ドライバーへの説明が不足し、入力が徹底されないこと。データが正確に集まらなければ、最適化も見える化も機能しません。第三に、効果測定の指標を決めずに導入することです。「走行距離」「再配達率」など、改善を測る数字をあらかじめ決めておくことが欠かせません。
中小企業が始めるためのステップ
いきなり大規模な投資をする必要はありません。次の順序で無理なく進めましょう。
- 課題の特定:再配達が多いのか、ルートに無駄があるのか、まず現状を数字で把握します。
- 小さく試す:一部のエリアや車両に絞って試験導入し、効果を確認します。
- 効果を測る:走行距離や再配達率の変化を記録し、投資に見合うかを判断します。
- 段階的に広げる:手応えがあった仕組みから、対象を広げていきます。
まとめ
ラストワンマイルは、物流業のコストと人手不足の両方に直結する重要な区間です。ルート最適化や再配達削減といった取り組みは、大がかりな投資をしなくても、小さく始めて効果を確かめながら広げていくことができます。「何から手をつければよいか分からない」という段階でも問題ありません。
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