深刻化する人手不足——建設業が変わらなければならない理由
「現場の職人が足りない」「若手が入ってこない」。建設業の経営者であれば、こうした悩みを日々感じているのではないでしょうか。国土交通省「建設業を巡る現状と課題」(2024年)によれば、建設業就業者の約3割が55歳以上を占める一方、29歳以下は約1割にとどまります。今後10年で大量の熟練技能者が引退することを考えると、従来と同じやり方では現場が回らなくなるのは明らかです。
こうした課題に対し、国が打ち出した施策が「i-Construction」です。本記事では、その概要と中小建設会社が無理なく導入を始めるためのポイントを整理します。
i-Constructionとは何か——いま注目される背景
i-Constructionは、国土交通省が2016年に提唱した取り組みで、ICT(情報通信技術)を建設現場に導入し、生産性の向上を図ることを目的としています。当初は公共土木工事におけるICT土工が中心でしたが、現在では舗装工・浚渫工など対象工種が拡大し、BIM/CIM(3次元モデルの活用)の原則適用も進んでいます。
注目される3つの理由
- 人手不足の深刻化:前述の通り、就業者の高齢化と若手不足が加速しています。
- 2024年問題への対応:2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。限られた時間で成果を出すには、作業効率の抜本的な見直しが不可欠です。
- 公共工事での加点評価:国土交通省の直轄工事ではICT活用が総合評価の加点対象となっており、受注競争力に直結します。
具体的な活用領域と効果
i-Constructionには多様な技術が含まれますが、中小企業が取り組みやすい領域を中心にご紹介します。
ICT施工(3次元データの活用)
3次元測量データをもとにICT建機を用いて施工する手法です。国土交通省の「i-Construction推進に向けた取組状況」(2023年)では、ICT土工の導入現場で施工日数が約3割短縮された事例が報告されています。丁張り設置が不要になるため、少人数での施工が可能になります。
BIM/CIM(3次元モデルによる情報共有)
設計段階から3次元モデルを作成し、施工・維持管理まで一貫して活用する仕組みです。国土交通省は2023年度から原則すべての直轄工事でBIM/CIMの適用を開始しました。図面の読み違いによる手戻りが減り、発注者との合意形成もスムーズになります。
施工管理アプリの導入
写真整理・工程管理・日報作成などをスマートフォンやタブレットで完結させるツールです。大がかりな設備投資が不要なため、最初のICT活用として取り組む企業が増えています。
導入時の注意点・よくある失敗
「全部一度に」は失敗のもと
ICT建機・3次元測量・BIM/CIMをすべて同時に導入しようとして、現場が混乱するケースがあります。まずは1つの現場・1つの工種に絞って試すことが重要です。
現場の理解なしに進めない
経営層だけで導入を決め、現場に押し付けるとうまくいきません。ベテラン職人に「なぜ変えるのか」を丁寧に説明し、操作に慣れる時間を確保する必要があります。
補助金ありきで考えない
国や自治体にはICT導入に関する補助金制度がありますが、補助金が出るからという理由だけで導入すると、目的が曖昧になりがちです。「何の課題を解決したいのか」を先に明確にしましょう。
中小建設会社が始めるための3ステップ
- 現場の課題を棚卸しする:写真整理に時間がかかる、工程の共有がFAXやホワイトボード頼り、といった具体的な困りごとを洗い出します。
- 小さく始める:施工管理アプリやクラウド型の工程管理ツールなど、月額数千円〜数万円で始められるサービスから着手します。
- 成果を見える化し、次の投資判断をする:「日報作成が1日30分短縮された」など、定量的な効果を記録します。効果が確認できたら、ICT施工やBIM/CIMへの段階的な拡大を検討します。
まとめ
i-Constructionは、大手ゼネコンだけのものではありません。施工管理アプリの導入やクラウド活用など、中小企業でも手の届く領域から始められます。大切なのは、自社の課題を起点に「小さく・確実に」進めることです。
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